- 粒子線治療装置 線形加速器 -
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イオン源から取り出されたイオンは2つの分析電磁石を通ってRFQに入射される。
RFQの加速原理は基本的に通常のライナックと同じであるが、集束の方法が違う。そのためにRFQは4ヴェイン型の構造(写真7)を持っている。ヴェイントップは理論的な等ポテンシャル面を再現するよう2次元的な加工を施されている。その形状は図3に示されるように波型になっている。水平方向(X)と垂直方向(Y)で波型構造の位相は90度ずれている。XとYの極性はお互いに反対であり、200MHzで入れ替わる。このときXとYの波型形状の頂上間に電位差が生じ、それによりビームは加速される。一方、水平方向(垂直方向)の対になっている2つヴェイントップの波型構造は位相が一致しており、その頂上付近で水平方向と垂直方向に交互に集束を受ける。
ヴェインの電圧分布のチューニングはタンク側壁に設けられた固定チューナー(写真9)、手動チューナーで行われる。運転中の場合には自動チューナーによって調整される。
図3:ヴェイントップの構造
写真7:RFQ内部
写真9:RFQの手動チューナー
DTLはアルバレ型線形加速器とも呼ばれ、RFQで加速されたイオンはDTLに入射される。加速周波数はRFQと同じ200MHz である。写真10がDTL内部の写真である。中心には57個のドリフトチューブ(DT)が並んでいる。それぞれのDT内に4極電磁石が組み込まれていて、ビームはDT内を通過する際に集束を受ける。加速はDT間で行われる。炭素と陽子・ヘリウムでは加速勾配が違う。それはRF電力を変えることにより変えられる。炭素では(q/mが1/3なので)900kW、陽子・ヘリウムでは(q/mが1/2なので)400kWのRF電力がDTLに与えられる。
DTLの直後にはストリッパー(写真12)が置いてある。ストリッパーは薄いアルミホイルで、ビームはそこを通ることにより、荷電変換される。C4+はC6+にH2+はH+になり、シンクロトロンに入射される。
写真10:DTL内部
写真8:DTLの手動チューナー
写真12:ストリッパ
写真11:DBC
線形加速器から出射されたビームは運動量にある広がりを持っている。その運動量幅はシンクロトロンの捕獲限界を越えており、そのまま入射すると捕獲効率が小さくなる。運動量の広がりを小さくするため、線形加速器とシンクロトロンとの間にDBC(写真11)が設置されている。DBCは基本的に加速器である。加速タイミングをビームパルスの中心に置き、早く来たビームを減速し、遅く来たビームを加速している。それによりシンクロトロンに入射されるビームの運動量幅を減少させている。
RFQのパラメータ | DTLのパラメータ | ||
---|---|---|---|
加速イオン種(q/m) | 1/3以上 | 全長 | 6.45m |
入射エネルギー | 35keV/n | 入射エネルギー | 1MeV/n |
出射エネルギー | 1MeV/n | 出射エネルギー | 5MeV/n |
加速周波数 | 200MHz | 最大表面電場 | 17.4MV/m |
タンク内径 | 0.35m | タンク内径 | 1.0m |
ヴェイン長 | 3.9m | 平均加速電場 | 2.6MV/m |
最大表面電界 | 23.4MV/m | セル数 | 58 |
ヴェイン間電圧 | 76kV | 磁極配列 | FFFDDD |
最大繰り返し | 2Hz | 最大繰り返し | 2Hz |