がん病巣に確実に放射線を照射するためには、呼吸など体の動きによる誤差を考えて実際のがん病巣の大きさよりも広い範囲に照射する必要があります。また、からだの奥に病巣がある場合、通り道になる正常組織にも放射線が照射されることは避けられません。 放射線による電離作用は照射された範囲にある正常組織にも起こります。正常組織を構成する細胞の遺伝子にも切断は起こりますが、正常なからだの細胞は一般にがん細胞よりも遺伝子のダメージを修復する働きが強いです。ある量の放射線を病巣部に向けて照射した場合、がん細胞は放射線によって受けた遺伝子のダメージを次の日までに治すことができません。それに対してまわりの正常な細胞は一回の放射線治療によるダメージを次の日までにだいたい直すことができます。 まわりの正常な細胞が耐えられるような量の放射線を何回にも分けて毎日照射することにより、がん細胞だけを治してゆき、まわりの正常な細胞は残すことができます。このように放射線治療のしくみとは、放射線によってがん細胞が受けるダメージと、正常な細胞が受けるダメージの違いを利用したものです。何回にも分けることで全体の放射線の量を多くすることができ,がんを完全に治すこともできます。
正常組織には少量の放射線であれば障害は残りませんが、高い線量の放射線が照射されると少しずつ正常な細胞にもダメージが蓄積してゆきます.これが放射線による副作用に相当します。正常な細胞の中にも大きなダメージを受け、働きを失う細胞も出てきますが、一般にはそのような細胞の数は少ないですのでまわりの細胞が分裂することによって補われ、臓器としての機能は保たれることが多いです。 副作用の症状は一般に治療後半から終わりごろに強くなることが多いですが、どのような症状が起こるかは、放射線治療の場所や範囲、放射線の量や照射方法によって様々です。 放射線による副作用には大きく分けて、治療中もしくは終了直後に起きるものと時間が経ってから起きるものの2つがあります。いずれも個人差は少なく、放射線治療の計画を立てた段階で起きることが予想できることが多いですので,専門的には副作用とは呼ばず、急性反応・晩期反応という呼び方をします(障害と呼ばれることもあります)。 治療中に問題となる副作用は急性反応と呼ばれますが、その症状は皮膚であれば日焼けや軽いやけどに例えられます。多くの場合一過性で後遺症として残るものは少ないです。放射線治療を受ける前には予想される急性反応・晩期反応について十分な説明を受け、理解した上で同意していただく必要があります。