陽子線や炭素イオン線は粒子線と呼ばれ、放射線の一種に含まれますが、従来の放射線治療で用いられるX線と比較してがん治療に優れた特徴をもっています。
コンピューターで高度に制御された粒子線を体の外より病巣めがけて照射することにより、がん細胞の遺伝子を直接破壊することでがんを治療します。粒子線を照射しているときも患者さんが痛みや熱を感じることはありません。したがって治療の際に麻酔薬や鎮静剤は一切使わず、患者さんは常に意識を保った状態で治療を行います。もちろん、メスや針も使いませんので輸血が必要になることもありません。
当センターではからだの1か所に限局した、がんを対象として粒子線治療を行い、患者さんがすみやかに社会復帰できること、しかも社会復帰後も治療前と同じ通常の日常生活ができることを目標としています。
今や『がんは治る』時代になった、とよく言われます。すべてのがん患者さんの内、約半分の患者さんが、がんを克服されているといわれています。
歴史的に手術はがん治療成績向上に大きな役割を果たしてきました。一般に早期のがんには手術が優先され、進行していたり高齢であるなど何らかの理由で手術ができない場合に放射線治療や化学療法が行なわれることが多いです。
しかし、早期がんであっても手術を行うことは体力的な負担が大きかったり、大きな術創や後遺症を残してしまう場合もあります。また、高齢や余病のために手術が行えない患者さんもいます。患者さんの生き方や求めるものは人それぞれ違いますのですべての患者さんにとって手術が常に最適な治療法であるとはいえません。いくつかの早期がんでは粒子線治療を選択しても、ほぼ手術と同様の治療成績が得られることが先行する粒子線治療施設から報告されています。
当センターではさらに少しでも多くの患者さんに対して粒子線治療を行い、がんによる死亡率を低下させること、また、粒子線治療の優れた特徴を明らかにし、普及させることも目標にしています。