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兵庫県立粒子線医療センター

ニュースレターNo.21
September 2005


CONTENTS

■□ 日本の粒子線治療誕生のことなど

■□ 陽子線と炭素イオン線による粒子線治療

■□ 粒子線治療の現状

■□ 見えないものの見学会

■□ 陽子線治療を終えて

■□ お薬相談窓口の設置について

■□ 兵庫県立西はりま養護学校開校

■□ 炭素イオン線治療にかかる高度先進医療の承認について



日本の粒子線治療誕生のことなど

名誉院長 阿 部 光 幸


日本の放射線医学の領域で世界に誇れるものは多くはないのだが、その中で粒子線治療は正しく日本が世界をリードしていると言えるがんのハイテク治療である。この粒子線治療誕生の契機になったのは1974年日本学術振興会と米国国立がん研究所の合意で発足した日米癌研究協力事業である。というのはこの時粒子線治療が取り上げられ、日米が協力してその実現に向けて研究を推進することになったからである。
粒子線治療が取り上げられた理由は、これまでのX線による放射線治療ではがん病巣を集中的に照射できないが、陽子線や炭素線などの粒子線を使えば、それが可能になるからである。このことは早くから物理学上では分かっていたのだが、問題はこれをいかに医学に応用するかということだった。先ず解決しなければならないことは、X線と違って粒子線を発生させるには巨大な加速器が必要なので、医療用にするため加速器をいかに小型化するかという物理、工学的な問題と、粒子線のがんに対する作用はX線と比較してどう違うのかという生物、医学的な問題であった。
これらの課題に取り組むために、私が日米癌研究協力事業の放射線治療部門を担当するようになった1978年、当時米国ロスアラモス国立研究所で試験的に行われていた粒子線の一種であるπ中間子線を使った治療を見学に行った。驚いたのは、π中間子線を発生させるための加速管の長さが800メートルもあるのである。あまりにも巨大で、とても医療用に使えるような代物ではなかった。
こうした様々な問題を解決するため、日米癌研究協力事業の資金により2年毎に日本とアメリカで交互にセミナーを開き、両国の専門家が研究成果を持ち寄って粒子線治療の実現に邁進した。この地道な努力が実を結んで、1994年世界最初の医療専用重粒子加速器が千葉の放射線医学総合研究所に完成し、炭素線治療が始まった。一方アメリカではロマリンダ大学が放射線医学総合研究所とほぼ時を同じくして陽子線治療を開始し、ハーバード大学でも陽子線治療がスタートした。日米の共同研究が発足してから約15年の歳月を要したのである。今振り返って両国の研究者が集まり、一つの目標に向かって議論をたたかわせた当時の情熱と熱気を忘れることはできない。
当医療センターは、こうした研究の成果をふまえ、兵庫県の多大な理解と英断によって2001年完成したことは前のニュースレターで述べた。陽子線と炭素線の両方の治療が出来る施設としては世界初である。開院以来治療は順調に行っており、本年(2005年)6月末まで、陽子線、炭素線治療合わせて689例の患者さんを治療したが、副作用が少なく、優れた治療成果が得られている。当センターには国内はもとより、国外からも多数の見学者が訪れる。私の欧米の友人も何人か見学に来たが、治療技術の高さ、治療環境の素晴らしさに感心していた。そんなこともあって、本年6月ヨーロッパの友人達と会って粒子線治療の情報を交換したが、その折りスイスのベルンにあるアインシュタインの家を見学し、忘れがたい思い出となったので、紙面を借りてご紹介したい。
ベルンはご承知のように、スイスの首都であるが、今なお中世の香りを色濃く残している町で、世界遺産にも登録されている。ここを訪れた理由は、ベルンはアインシュタイン一家が1902年から09年までの7年間を過ごした所で、1905年世界の物理学会を揺るがす3つの理論、特殊相対性理論、光量子論、ブラウン運動に関する理論がここで生れたからである。相対性理論はだれでも知っているが、殆どだれも分からないという有名な大理論だが、アインシュタインが当時26才の若さで、しかもユダヤ人であったがために大学や研究所に就職できず、やっとベルンにある特許局の職員になり、仕事の合間にこの物理学上革命的な理論を書き上げたのだから驚く外はない。その上、相対性理論にとどまらず光量子論、ブラウン運動に関する理論と、どの一つを取ってもノーベル賞に値する論文を(事実、アインシュタインがノーベル賞を受賞したのは相対性理論ではなく、光電効果の研究業績に対してである)1905年の1年間で次々に発表したとは信じ難いことである。
そのため1905年は奇跡の年と言われ、今年は丁度100年目に当ることから、「アインシュタイン奇跡の年」100周年記念が色々な国で催されている。ベルンはその奇跡の誕生の地であるから、是非見学したいと思っていた。アインシュタインの家(アパート)はベルンのメインストリートであるクラム通りの49番にあった。通りの両側には土産物、ジュエリー、時計、ブティックといった店が並んでおり、ショーウインドーには様々なアインシュタインに関する写真が飾られていた。アパートの入り口には「アインシュタインハウス」という小さな標識が出ているだけなので見逃してしまい、人に聞いてやっと分かったという有様だった。日本なら人目につくような大きな看板が出ているところだろうから、国が違えばこうも違うのかと驚いた。
狭い木造の階段を上ると2階がアインシュタイン一家のアパートである。手前の部屋が見学用の受付になっており、次の間に子供の揺りかご、アインシュタインやミレヴァ夫人が愛用した洋服の複製などが陳列されている。大通りに面した一番大きい部屋がアインシュタインの書斎で、当時の資料や写真などが保管、展示されている。この部屋であの3つの大理論が生れたのかと思うと、言葉には言い表せない感動を覚えた。写真は許可を得てアインシュタインの書斎の椅子に座って撮ったものである。
外に出るとアインシュタインの家のごく近くに、1256年まで町の門として使われていたと言われるベルンのシンボルともいうべき時計塔が見える。その周りに、毎時機械仕掛けの人形や鳥たちによって時が告げられるショーを見ようと大勢の見物客が集まっていた。日本からのグループツアーも加わり町は観光客で大変な賑わいだった。100年前の町はどんな様子だったのだろうか。人形や鳥たちは今と変わらず時を告げていただろう。だがアインシュタインが過ごした時代はこんな喧噪の町ではなかったに違いない。色々な思いに耽りながら、ユネスコが「ヨーロッパで最も美しい緑と花の町」と称えたベルンを後にした。



陽子線と炭素イオン線による粒子線治療

院長 菱 川 良 夫


本年3月から、炭素イオン線治療が始まりましたが、6月からは、高度先進医療として行っています。したがって、陽子線治療と炭素イオン線治療が、高度先進医療として提供できる国内での最初の施設になりました。
さて、初めてニュースレターを読まれる方のために、当センターの提供ならびに目指している医療を簡単に照会します。

1.陽子線と炭素イオン線の高度先進医療
 陽子線は、2001年に臨床試験を行い、国に申請後02年、承認、03年、一般診療開始、04年、高度先進医療。炭素イオン線は、02年、臨床試験、05年、承認、一般診療開始後、高度先進医療も開始。05年6月末で、一般診療開始後2年3ヵ月になりますが、629名の患者さんを治療しています。臨床試験の60名も含みますと、700名弱になります。

2.治療基準に従った医療
 臨床試験でのプロトコールに従った治療方法をそのまま一般診療にも応用し、各疾患の治療基準(臨床試験でのプロトコール)を外部の専門家と共に作成し、それに従い治療をしています。担当医が違っても同じ治療をする事がチーム医療の原則です。

3.治療基準外への対応
 臨床試験では、プロトコールに外れた場合、臨床試験への参加はできませんが、一般診療は研究ではないので、粒子線治療を強く希望する場合、医療としての妥当性や技術面で対応できるかどうかの検討を治療方針検討会議で行います。医師個人の判断ではなく、チーム全体での判断をするために、新たに作った会議です。

4.チームで患者さんを診る
 患者さんも医師も人間なので、相性があります。主治医制ですと、入院期間中に相性が会わない事がわかっても交代は困難です。そこで、チーム全体の医師で診ていくために、入院していても、外来で違った医師が診察をする事にしました。ただ、指示を出す必要があるため、入院患者さんには、そのための担当医がつきます。

5.病院らしくない病院
 「病院らしくない病院」を施設として造りましたが、パジャマを着るのは寝るときだけのコンセプトに賛同していただき、患者さんと共に、本質的な「病院らしくない病院」を目指しています。

6.がん治療の概念を変える
 がんは、死に至る病であるので、どんな苦しい治療をも受け入れる患者さんに対して、粒子線治療の特徴である、やさしい治療を行う事で、「苦しいがん治療」から「楽な楽しいがん治療」へと、がん治療の概念を変える事を目指しています。

7.FST (follow-up support team)の確立
 がんになる患者さんが増え、また治癒する可能性も高くなってきますと、従来のように治療をした病院が、経過観察の全ての検査を行っていけば、治療を専門とする病院での機能が落ちてきます。当センターのように粒子線治療に特化した病院では、粒子線治療以外のがんの診断や、経過観察の診断・検査は、紹介元病院の協力が無ければ不可能です。一般診療を通して多くの病院の理解が深まってまいり、このような経過観察の方法も理解されてきました。 
そこで、経過観察を患者さんの立場に立って行うために、医師と看護師からなる、支援チームを立ち上げることにしました。経過観察中の電話相談や適格なアドバイスをする目的です。

当センターの医療は、まとめるとこのようになります。現在、普及化の推進と、多くの粒子線治療施設の成果から、各地で粒子線治療を導入する計画があります。ただ、装置を導入すればすぐにでも、当センターと同様の粒子線治療ができるように思われますが、実はそうではありません。他の場合、例えば、飛行機だと、飛行機を買ってもすぐに飛ばせない事は、容易に理解されるのですが、医療ではどうもそこが誤解されるようです。これは、日本の医療では、装置は重視されるのに、それを稼動させる人や保守管理する人の技術力を軽視した結果です。
先行する粒子線治療施設としては、装置以外の運用や、保守管理の部分でも知的財産が蓄積されてきました。そのようなソフト部分をも導入する施設には提供したいと考えております。
陽子線治療も炭素イオン線治療も順調に治療ができるようになりましたが、今後も、患者にやさしい医療を、粒子線治療装置の有効利用で行っていきたいと考えております。



粒子線治療の現状

医療部長 村 上 昌 雄

  2001年治験開始から2005年7月末までに732名の患者さんに治療を行ってきました。


1.対象疾患

 線種・腫瘍の部位による内訳は下表のとおりです。

年度 線種 患者総数 腫瘍の部位
頭頸部 頭蓋底 骨軟部 前立腺 直腸 その他
2001 陽子 30 4 0 5 5 0 16 0 0
2002 炭素 30 19 0 3 6 2 0 0 0
2003 陽子 250 14 0 18 28 0 190 0 0
2004 陽子 289 38 4 30 31 3 175 1 7
炭素 5 1 0 2 0 2 0 0 0
2005
7月
陽子 117 21 4 12 18 4 49 0 9
炭素 11 1 0 1 1 7 0 0 1
732 98 8 71 89 18 430 1 17



患者数は前立腺、頭頸部、肝、肺の順ですが、肝転移、肺転移など転移癌の患者さんも20名含まれます。転移癌でも1箇所だけなら粒子線治療が行えます。これは他の粒子線治療施設と異なるところです。線種別に見ると陽子線686名(94%)に対し、炭素イオン線46名(6%)と陽子線治療を受ける患者さんが多くを占めています。その理由は、炭素イオン線治療の一般診療の開始は2005年3月であり2002年の治験から承認まで時間がかかったためです。現在、炭素イオン線治療は主に骨軟部腫瘍など放射線抵抗性腫瘍に適用しています。しかし、陽子線治療と炭素イオン線治療のどちらが有効な治療法であるか、まだわからない疾患も多くあるため、両者の比較試験を行い安全性と有効性から見た評価を行う必要があると思われます。当センターは両方の粒子線を使用できる世界で唯一の施設ですので、今後、この課題を解決すべく臨床的な検討を行ってゆく予定です。

2.患者紹介ルート

2004年度までは患者さんの紹介は原則として兵庫県立成人病センターの放射線医療室を窓口としてきましたが、陽子線治療も炭素イオン線治療も高度先進医療が行えることになったのを機会に、適格判定のための検査が全てそろっている患者さんは直接当センターで診察を行えるようになりました。その結果、下図のように今年度は約半数の患者さんは直接当センターを受診でき、治療開始までの時間短縮に寄与しています。

患者紹介シート


3.受診動機

 粒子線治療を受けることになった理由を患者さんに伺った結果を下図に示します。当初、マスメディアの影響が多かったのですが、最近は主治医など紹介元の医師から粒子線治療を治療法の一つの選択枝として説明を受け、来院される患者さんが増えてきました。

受診動機



見えないものの見学会

放射線技術科 主任放射線技師
須 賀 大 作

インフォームドコンセント(以下、IC)の意味は、「説明」と「同意」とされている。もっとも大切なことは、説明と同意が「納得」できるものでなければならない。医療、治療技術などの専門的な内容を判りやすく説明しなければ、患者さんの納得は得られない。また、納得のいかないままでの同意は、思わぬ意見の対立を発生させるリスクを生じる。

インフォームドコンセントイメージ

技師による患者さんへの説明は、「治療のながれ」と「装置の説明」の2点としている。「治療のながれ」説明では、治療部位毎の治療の進め方をスライドで説明している。所要時間は約40分で、アニメーションを含めたスライドを作成し、判りやすい説明を心がけている。ICの過程で、身体の痛む場所や、視力や聴力など治療を行う上で注意しなければいけない点が認識される。これらの情報は、電子カルテ情報として登録されるとともに「テックファイル」と称している治療カルテに記載し、確実な情報の共有化を図っている。技師ICにより、治療への理解と協力が得られること、適切な患者サービスが行えることなど、医療スタッフ側への利点が少なくない。
ICは、当初「治療のながれ」だけを行っていた。治療の説明に重点をおきつつも、雷による瞬間停電(通常0.5秒程度)でも装置が止まってしまうことなど、装置にはアクシデントがあることを説明し、それによる治療の遅延や中断、中止となった場合の理解と協力をお願いしていた。ところが、いざアクシデントが起こると少々勝手が違ってきた。「どうして最先端の装置が壊れるのか」「21世紀の科学技術をもってしても壊れるのか」など、手厳しいご意見をいただくことになった。これは、図1に示すように、「説明」はしたが、「納得」は得られていなかったことになる。であれば、より納得していただける説明をすべきと考えた。そこで、「装置説明の見学会」を始めることとした。
開催は不定期であるが、患者さんの入れ替わりの時期を見計らって実施している。治療の終了する時間に治療ホールに集まっていただき、パネルによる装置の説明と、治療室の機能、120トンにおよぶ回転ガントリの見学などを行っている。
粒子線が重さと電荷(電気量)を持つ放射線であること、粒子ゆえに1個2個と数えられることなどを説明する。患者さんは、「治療のながれ」説明の時とは違った雰囲気で聞いておられる。メモを手にされている方、カメラ持参の方など興味津々の様子である。陽子線の元となる水素ガスから800億以上の原子核を取り出すこと、その原子核を光の速さの70%程度まで加速するときには、約100億の粒子となり、患者さんのもとに届くまでに地球を2周以上する距離を走ることを説明する。見学が進み、回転ガントリを実際に回転させて見ていただくと、決まって「ウワァー」、「オォー」といった声があがる。質問も様々な観点から出され、見学をサポートする技師もあちこちで質問攻めになっている。
見学会を行っているうちに、この見学会は「見えないもの」をお見せしている見学であることに気がついた。放射線は、たいていは目に見えないものであるし、においもなく五感で感じることができないものである。また、「安全」も同様に五感で感じることができないものである。
治療準備が整い「それでは治療を始めます」と技師がマイク越しに声をかける。「はい、治療が終わりました」と再び声をかけるが、その間、患者さんは治療を実感することがない。それゆえに、粒子線がどのような仕組みで生み出されているのか、装置はどのように安全を確保しているのか、誰がどのように関わっているのかが、患者さんが知りたいことであると判った。言い換えれば、治療を受ける装置がどうなっているかを「納得」してもらう必要があった。装置が10万点を超える部品から構成され、粒子線が照射されるまでに幾重ものチェック回路を通過して高精度の治療が実施されることを、説明とともに頭の中でイメージをしてもらっている。
納得してもらえた効果は、目に見えて現れてくる。アクシデントで治療が遅延すると「大変だね」「早く直って良かったね」と声をかけていただくことが多くなった。「見えないものの見学会」は患者さんと我々の見えない信頼関係を築いてくれている。



陽子線治療を終えて

初めての海外からの患者さん 金 炯 泰

 
私は、韓国釜山で公認会計士事務所を運営している73歳の男性です。

癌診断された経緯

2004年8月20日、家内が直腸癌最後の復元手術を終わり、看病していた時、20年前に釜山大学病院で前立腺肥大検査を受けて、薬を飲む治療を受けたことが浮かび、家内が入院している韓国国立癌センター泌尿器科で検査を受けました。
結果、PSAが13.4という高い数値が出、組織検査においても、12箇所の標本中8箇所から癌細胞陽性、MRIとCT等いろいろな方法で調査したところ転移してはいないが、2期から3期に入る時期という宣告がありました。

治療法について

2004年8月20日、国立癌センター泌尿器科主治医から治療方法は1.前立腺癌手術2.放射線治療3.その他薬物治療があるが、その中で手術の方法が一番良いということでした。

陽子線治療を知った経緯

8月20日国立癌センター主治医からの宣告を受けて、その日の夜、同期会の座席で私が癌にかかっていることを発表しました。
それが契機になって、翌日の朝早く友人の一人から家に電話があり、兵庫県立粒子線医療センターのことを知りました。
早速、ホームページを開けてみると、手術をしなくても手術と同様に完全な効果があること、一時的な尿失禁を起こすこともなく男性機能も維持できるということでした。

粒子線医療センター入院手続き

  9月15日韓國釜山の供淳博産婦人科院長(私の高校同期生)さんの紹介で広島青少年文化センター所長様を通じて粒子線医療センター菱川院長に陽子線治療を希望しました。
結果、院長様の特別な配慮で、2005年3月28日成人病センターを経由しなくても粒子線医療センターに直接入院することが出来ることとなり、2004年8月12日から2005年3月24日まで、ロレリン注射とカソテツス内服によるホルモン療法を韓国釜山で実施しました。

一週間の入院と治療

2005年3月28日粒子線医療センター入院時、国立癌センター紹介状、今までの検査結果のMRI、CT、骨シンチ、胸部レントゲン写真等を提出しました。
4月3日までの一週間に渡り、心電図検査、前立腺MRI検査、固定具作成、採血・採尿・検便、前立腺CT検査、直腸内視鏡検査、胸部レントゲン、腹部レントゲン、PET検査等が終わりました。
又医師からは、治療スケジュールの説明、皮膚レントゲン撮影、同意書とアンケート受け取り、治療開始前の説明、治療棟の説明があり、4月4日1回目の陽子線治療を終え退院しました。

入院中の医師の診察と看護

入院中、香川医師を始め看護科長、看護師さんの回診と血圧・脈拍・体温・便回数の問診治療呼出看護等の見回りは午前午後又夜間に行われ、少しも不便が無く、又皆さんの顔がいつも明るく、親切で、優しかったです。

退院後の通院治療

粒子線医療センター菱川院長さんの配慮で歩いて約35分、近くにある兵庫県立先端科学技術支援センターゲストハウス209号に泊まり、家内が作る食事を食べながら37回の治療が終わるまで通院治療することが出来ました。治療時間に合わせてバスを利用する事もあるけれど、私は最後まで運動する気分で歩きながら治療を終わりました。

陽子線治療の体験

4月4日から5月26日までの53日間にわたり37回の陽子線治療を受けました。照射は腰の横を左右に一日交代で照射しました。照射の位置を決める時間が大体30分程度ですが、陽子線が照射される時間はわずか30秒以内です。その時も体に感じることはありませんでした。照射中、照射室には私一人ですが、万一の場合の為、コールボタンを握っています。又、放射線技師が操作室で常時ビデオカメラで観てくれるので安心でした。
治療室は、軽音楽が流れて、リラックス出来ましたが、私が外国人で、好きな韓国音楽がありましたら言って下さいという親切もあり、ベッド操作の言葉を韓国語で言えばすぐ韓国語でアナウンスしてくださり、治療はとてもうれしい時間でした。又、放射線技師さんは皆親切な人達で、本当に有難く思います。最後の照射を終わって記念写真も撮りました。

治療中余暇の過ごし

退院後、支援センターゲストハウスで泊まりながら、治療に行くまでの約40分を歩いて往復する以外は、準備してきたノートブックで自由の時間を楽しむ事が出来ました。又午後4時には韓国の家で生活する通り韓国国仙道(韓民族正統的心身手練法)を毎日1時間20分して、体力管理した結果、37回の治療が終わっても、私の体重が2kg程度増えました。54kgの体重が妻が作る食事と粒子線医療センターまで往復の距離を歩いた適度な運動の為に、2kg増えた事は私には相当な事件でした。

患者相互交流

初め一週間入院して、色々な検査と治療している間、Kさん、Yさん、Mさん、Oさん又前立腺癌治療卒業予定者数名が第一回の同窓会を韓國釜山で開催する事を議論し、私が今、韓國済州道、釜山で開催する計画を、来る10月中旬頃2泊3日の日程で準備しています。
この行事が成功すれば次の第2回目は、長崎で開催予定です。

陽子線治療の副作用について

私の場合、陽子線照射回数37回を終わるまで、皮膚表面が薄黒い色に変化する程度で、痛みや痒みはありませんでした。又、排尿回数は朝8回、夜3・4回で日中平均2時間ごとに1回程度でした。
この回数は、治療前と全く変化は無いですが、放尿中、尿道に少し痛みを感じました。これも時によっての気分だけで我慢することが出来ましたが、治療が終わり、韓国に帰ってもしもの場合、苦痛を感じるかもしれないので、苦痛の感じない薬の処方を受け、帰りました。

治療終了にあたり治療終了説明

5月26日、37回の陽子線照射が終わり、27日(金曜日)その間治療した結果と、今後経過観察を続けることに対しての説明がありました。菱川院長さんと香川医師さんから、今後の病気をきちんと治すために、治療による反応を観ること、癌治療の効果ならびに再発チェックすること、これからは定期的な経過観察により早期の対応が可能であること。
1.私が直接管理する患者カルテを受けました
2.一般的な場合、定期的に画像検査(CTやMRI等)はせず、一時的に3ヶ月間に血液検査だけ経過観察担当主治医(小田康江さん)に送ってくださいと言われました。
3.菱川院長さんからは、今後10年間経過観察担当医が管理すると言われ、名誉院長からはいつでも異常がありましたら連絡下さいという有難いメールも受けました。
照射前にホルモン治療の時は、PSAが急に下がりましたが照射中にだんだん上がり、照射完了後には0.4になりましたが、これは照射終了後には下がると言われ、通例だと聞いて安心しました。

前立腺PSA数値の変化
検査日 2004.8.10 2005.1.27 2005.3.29 2005.5.2 2005.5.26 2005.6.20
正常値 最初癌宣告 ホルモン治療中 ホルモン治療終了 照射中 照射完了 治療終了
0-4 13.4 0.08 0.008 0.143 0.4


治療後の生活

37回陽子線照射をみんな終わるまで少しも苦しいとか痛みが無く終わることが出来ました。5月26日の治療を終わって、5月27日には治療開始から終了までの結果と以後の経過観察に対しての説明を聞いて帰りました。
5月28日相生を出て、新幹線に乗り、下関まで行って、フェリーで家のある釜山に到着し、5月30日職場復帰し、今では熱心に働いています。

終わりに

2004年8月10日韓国国立癌センターで前立腺癌の宣告を受けて、2005年5月27日兵庫県立粒子線医療センターで陽子線治療を終えるまで粒子線医療センター菱川院長をはじめ洪淳博産婦人科院長様、広島青少年文化センター小田寧之様等の特別な配慮で、私を前立腺癌、それ以前の体に戻してくれたことは一生涯忘れることは出来ないと思います。
又、粒子線医療センターの名誉院長をはじめ、センターで働いておられる医師、看護師、技師さん全職員に有難く思いながら、粒子線医療センターの永遠な発展と皆さんのご健康をお祈りします。
皆さん誠に有難うございました。



お薬相談窓口の設置について

薬剤科 科長 兵 頭 純 子

 薬剤科では、従来から必要に応じてお薬についての説明および相談を行ってきましたが、当センターに来られる患者さんは特にお薬やサプリメント等に対する関心が強いこともあり、治療の傍ら少しでもお薬について理解していただくために、平成17年7月よりお薬相談窓口を設けました。
近年、健康や医療に関する情報が氾濫しておりサプリメントやOTC薬(街の薬局で購入できる薬)が安易に使用されるケースが増えています。「がんに効く」と宣伝されているものは高価にも拘らず非常に多く使われているように思います。
これらの使用については、一概によくないとは言えませんし、場合によっては有効だとの考えもありますが、使用するにあたっては次のような点に注意する必要があります。これらのことを踏まえて
指導や相談に応じています。

・食品であるにも関わらず医薬品成分が添加されているような違法な商品が出回っている。また、近年インターネット等を利用して、規制の緩やかな国から個人輸入するケースも増えている。
・食品といっても何らかの有害作用(副作用)が起こる可能性もある。
・医薬品を使用しているとき、相互作用等により思わぬ反応が起こることがある。
・医師の治療を受けているとき、その治療に悪影響を及ぼす恐れがある等。

サプリメントなど健康食品に関しては、効果・副作用・医薬品との相互作用等のデータが十分でないことが多いですが、可能な限り情報収集を行い、その患者さんに合った情報を提供していきたいと思っています。
院内処方のお薬に限らず他院・開局薬局などのお薬からサプリメント等まで、あらゆるお薬に対応、指導のできるマルチ薬剤科を目指し、当センターの基本理念である、「病院らしくない病院」に相応しい薬剤科にしたいと思います。



兵庫県立西はりま養護学校開校

 障害教育の教育環境を充実させるため、本年4月、当センターの隣に開校しました。学校内には、ふれあいスポーツ交流館(来年開設予定の県立総合リハビリテーションセンターブランチと共用)として、アリーナ、温水プール、トレーニング室が設置され、障害者等に対するスポーツの普及・振興を図っております。
なお、スポーツ交流館は、地域住民にも開放されており、当センターの患者さんも、治療以外の時間の有効利用としてトレーニングに励んでおられます。



炭素イオン線治療にかかる高度先進医療の承認について

 平成17年5月26日付で厚生労働大臣の承認を得て、平成17年6月1日より高度先進医療として保険診療を開始いたしております。



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