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兵庫県立粒子線医療センター

ニュースレターNo.24
April 2007


CONTENTS

■□ 粒子線医療センターのイチゴン

■□ 粒子線治療の現況報告

■□ “恩返し”(研修の受け入れ)

■□ 粒子線がん治療装置 その安定的・効率的運転

■□ 患者・医療者のコミュニケーション

■□ 薬剤科の業務について〜入院時の持参薬チェックについて〜

■□ 免疫力を上げる

■□ 粒子線医療トピックス



粒子線医療センターのイチゴン

兵庫県立粒子線医療センター 院長 菱川 良夫


 2003年一般診療を開始しましたが、10万個の部品からなる巨大な装置で、年間を通じての医療を安全に、順調に進めるため、その年の年初の挨拶で初めて、年間目標のイチゴン(一言、キーワード)を掲げました。「コラボレーション」です。医療スタッフ、装置スタッフ、事務スタッフ、患者さん、ならびに装置メーカーが、とにかく一丸となり頑張らなければ、とてもこの粒子線治療という装置依存型の医療は、やっていけないと考えたからです。その年の5月には、雷による装置内の過電流で、午後の治療中に装置が止まりました。直ちにメーカーの技術者が来て、装置のチェックをし、夜遅く装置を再起動し、我慢して長時間待っていただいた患者さんの治療が再開できたのは、メーカー、医療スタッフ、患者さんのコラボレーションのおかげでした。
 2004年のイチゴンは「楽しい治療」で、治療を受ける患者さんが楽しく治療ができるような環境作りを進めました。積極的にゴルフ、テニス、ハイキングなどを治療期間中にすることを進め、がん治療が日常生活で楽しくできることを目標にしました。最近では、当センターの診療カードで、近辺のゴルフ場でゴルフができるようで、ゴルフ場の協力にも大変感謝しています。また、2年前にできた、隣接する体育館の利用をされる患者さんが多く、治療期間中にシェーップアップされる方も増えてまいりました。
 2005年は「進化」で、装置や、診療面での改善を進めました。放射線技師、物理工学系スタッフとメーカーの共同作業での保守管理データベースの構築は、技術科長を中心として2003年から始まっていたのですが、装置を進化させるために、その解析を進めました。2006年2月の装置保守のための1カ月間の休止後、装置は、運用面で大きく変わりました。朝の9時から夕方の5 時の勤務時間帯で、1日30人の治療をするのが精一杯だったのですが、保守管理が終了してからの装置の再稼動後には、60人を余裕を持ってできるようになりました。また、1年に1回、3-4週の保守休止期間が必要だったのが、1月に1回、4-5日を保守点検日とすることで、年間を通じての装置稼動が実現しました。この間、メーカーは、兵庫県の指導の下で、数点の特許申請をしており、今後の後発施設での装置にはこの成果が生かされることになります。
 2006年は、「ハッピーな医療」です。医療事故や診療面で患者さんと医療側が対立することが、マスコミ報道で多く見られ、医療をすることが、患者さんにとっても医療スタッフにとっても、非常に不幸な時代が訪れ始めたことが実感され、何とかみんながハッピーになる医療を目標としたかったからです。特殊な医療機関である当センターでは、治療後の経過を情報として正しく持つことが大事で、また再発時などに、速やかにアドバイスできる体制を作ることが、患者さんとセンターにとってのハッピーな医療の原点になると考えました。そこで、患者さんにとって大事な経過観察を組織としてどのようにしていくかを考え、医療スタッフと事務スタッフに、すばらしい病診連携をしている愛知県のトヨタ記念病院の見学をしてもらい、その結果として、病院としての組織的な経過観察をする体制ができ始めています。また、患者さんは、医師に対して非常に弱い立場のため、1対1の診察では、十分な思いを言われない事が多いのですが、数人集まれば医師に対しても結構よく自分の思いを伝えられることが判りましたので、がん専門看護師の進行のもとで、不定期ですが、患者さんと院長の懇話会も始めてます。そこでは、1対1の診察では聞けない、患者さんの悩みや、がんに対する思い違いなどを聞くことができ、診療にも良いフィードバックになってきています。
 今年2007年は、「ニューコラボレーション」です。一般診療開始後5年目で、1300名を超える治療をしてきましたが、そろそろ診療になれすぎる時期と考え、2003年の原点に戻り、2回目のコラボレーションを、「ニューコラボレーション」として、スタッフにお願いしました。昨年来の経過観察室の組織化により、患者さんの経過の把握が進みだしましたので、医療スタッフのニューコラボレーションとして、今までの治療患者さんの経過を知り、今後の治療の改善・進化を、医療部長を中心に始めています。100人以上の方がなくなっており、医療スタッフにとってもつらい仕事ですが、ここで過去での治療結果を学び、将来の治療に結び付けようという考えです。最近では、粒子線治療をこれから初める施設からの研修員を受け始めており、これも将来へ向けての各施設間でのニューコラボレーションの始まりと考えています。また、治療計画は、従来、医師が全てやっていましたが、米国流に、医師のする部分、品質管理士(米国での医学物理士)のする部分と、治療計画でのニューコラボレーションを進めます。このために治療計画メーカーとも話し合いを通じてニューコラボレーションを進めます。




粒子線治療の現況報告

医療部長 村上 昌雄


1.治療患者数と対象疾患
 2001年の治験開始から2007年まで計1478名の患者さんに治療を行ってきました。治療患者数の推移を下図1に示します。初めの2年間は治験のため治療患者数は制限されていましたが、2003年以後、年々治療患者数は増加しており今年度は514名です。




 治療対象臓器は前立腺が701名(47%)で最も多く、以下、頭頸部228名(15%)、肝臓208名(14%)、肺147名(10%)の順です。前立腺がんは陽子線治療だけで治療を行っており、骨軟部領域の腫瘍の多くは炭素イオン線治療を行っていることがわかります(図2)。



 年次別に疾患の割合を見ると、前立腺がんの割合が減少し、肝臓がんや頭頸部腫瘍の割合が増えていることがわかります(図3)。
また、直腸がん術後再発や転移がんなど、新たな対象疾患の患者さんも増えてきています。




2.紹介元都道府県上位ベスト10と紹介元病院上位ベスト5
 一般診療が始まってから1418名の患者さんに治療を行いましたが、医療機関は412施設から紹介いただいています。医療機関の所在地から見ると、兵庫717名と大阪286名が多いです。以下、愛知47名、京都44名、広島29名、徳島29名、奈良23名、香川20名、福岡20名、岡山18名と大多数は西日本の医療機関から紹介されています。下表1は紹介の多かった医療機関上位ベスト5を全体、疾患別に示しました。


表1  紹介元都道府県上位ベスト10と紹介元病院上位ベスト5

全例(人) 1418 頭頸部(人) 203 肺癌(人) 141 肝癌(人) 199 前立腺癌(人) 683

1位 兵庫成人病セ 94 兵庫成人病セ 15 兵庫成人病セ 17 明石市立市民 43 兵庫成人病セ 37
2位 神戸大 86 神戸大 14 大阪成人病セ 10 神戸大 16 姫路赤十字 30
3位 姫路赤十字 45 姫路赤十字 8 刀根山 5 兵庫成人病セ 10 神戸大 28
4位 明石市立市民 45 大阪大 8 神戸大 5 済生会兵庫県 7 新日鐵広畑 24
5位 大阪成人病セ 36 大阪成人病セ 6 大阪総合医療セ 4 赤穂市民 6 原泌尿器科 22

上位5 傑の計 306 51 41 82 141

占める割合 22% 25% 29% 41% 21%


3.主な疾患の最近の治療成績
 主な疾患の3年生存率、3年局所制御率(頭頸部腫瘍、肺がん、肝がん)、3年PSA制御率(前立腺がん)を表2にまとめた。高齢者、他治療後の再発例、高度肺気腫、肝硬変などの手術不可能な症例を含んでいます。観察期間が充分ではないのと、解析が不十分ですので、今後の検討で数値は変化することに注意すべきです。一般に頭頸部腫瘍は手術不能な疾患、手術後の再発例なども含むため、全体の成績は他疾患より悪くなっています。詳細な検討は先に譲るが、現時点で粒子線治療の期待される成果が得られていると評価しています。


表2  主な疾患の最近の治療成績
疾患 対象 例数 3年生存率(%) 3年局所制御率(%)
3年PSA 制御率(%)
頭頸部腫瘍全例 2001-07.1 208例 42 66(局所制御率)
肺がんI期 2001-07.1 111例 78 81(局所制御率)
肝がん全例 2001-07.1 186例 61 84(局所制御率)
前立腺がんA,B,C 群 2003-04.12 291例 98 92(PSA 制御率)




“恩返し”(研修の受け入れ)

医療部 放射線技術科長 須賀 大作


 相撲の用語に、お世話になった兄弟子から白星をあげることを「恩返し」という慣わしがあります。この「恩返し」という言葉は、お世話になったおかげでこれだけの成果を出すことができましたという例えとして広く使われています。
 19年4月、兵庫県の粒子線治療施設立ち上げに関わってから10年目を迎えます。その1年目、兵庫県庁に設置されていた整備室に、それまでの白衣からスーツに変えて初出勤した日を昨日のことのように思い出します。緊張と未知なるものへの不安感で、えらい所に来てしまったという思いでいっぱいでした。県庁に落ち着くまもなく、粒子線治療を先行して着手していた国立がんセンター東病院、放射線医学総合研究所(以下、放医研)へ研修に向かいました。研修先では、医師、技師、装置に関わる物理の方々に温かく迎え入れてもらいました。緊張や不安のなかで受けた優しさは、時間が経っても風化せずに鮮やかな記憶として残ってます。
ほぼ1年におよぶ研修の成果を頼りに、その後充実してきたスタッフと共に施設の立ち上げを行いました。夜を徹して行われた香川医師を中心とする生物試験や電子カルテシステムの立ち上げ、治療計画装置や診断機器の調整など多くの整備項目を一人一人が責任を持って取り組みました。
 近頃、その立ち上げ当時をよく思い出します。なぜなら、9年前の自分を日々見ることができるからです。18 年8月、平成21年度陽子線治療施設の開設を予定している福井県立病院からの研修を受け入れました。続いて10月、平成20年に同じく陽子線治療施設の開設を予定している福島県の総合南東北病院からの研修を受け入れました。まさに、彼らの姿は、国立がんセンター東病院や放医研でお世話になった我々の姿なのです。彼らは、兵庫県の粒子線治療システムを通して自分たちの立ち上げていく施設の可視化を行っています。そこに見えた課題を解決していくことで、立ち上げる施設のイメージを立体的にしているのです。
 研修を受け入れるにあたり、幸いにも、これまでプロジェクトとして行ってきた「計算機高度化」「保守ネットワーク」「保守分散管理」が整備を終えて稼働を開始しました。@計算機高度化は、117件におよぶ効率化案をシステムとして実現させたもので、安全性と精度を損なうことなく劇的な時間短縮を実現させました。A保守ネットワークは、装置に関する情報をデータベースとして構築したもので、技術スタッフ、装置運転技術者、メーカーの三者が情報を共有するシステムです。ここに蓄積されたデータを自在に検索したり、閲覧することで装置トラブル時の復旧までの時間短縮に役立てています。得たい情報を集約できる保守ネットワークは、教育支援のツールとして活用することも期待しています。B治療を通年行えることを目的として18年4月より保守分散管理の運用を開始しました。保守を分散することによって、治療だけではなく研修も通年受け入れることができるのはよい意味で想定外でした。治療ホールに研修の技師紹介を掲示しています。患者さんから施設の開設時期や場所について質問を受けることも少なくないようで、自分たちの施設のパンフレットを置くようにもなっています。この部数が減っていくのが、とても嬉しいようで、その気持ちが施設立ち上げの原動力になっていくと思います。
 施設を立ち上げていく過程では、様々な課題を抱えることになります。我々は、その時々にプロジェクトを作ってチーム力で解決をはかってきました。そして、プロジェクトの目的を明確にするためネーミングを行いました。陽子線と炭素イオン線の切替に1時間近くを要した時期に、何とか30分を1分でも切りたいとして「29分プロジェクト」を開始しました。現在、切替時間は13分にまで短縮されています。目的を明確に示すネーミングを行ってプロジェクトを開始することは効果的でした。しかし、このネーミングに四苦八苦することも少なくなく、モチベーションを高める言葉を模索している中で、素晴らしい言葉をある方に頂きました。それは「誰のために、何のために」という言葉で、これならば、「患者さんのため、治療の安全のため」と目的を明確にすることができます。そして、この目的は達成され完結するものでなく、継続されていくものです。研修で、こうした努力が必要なことを伝えることができればと思います。研修を縁として、施設間の連携が生まれることが何よりも嬉しいことです。よりよい施設を立ち上げてもらうために、できるだけの事を惜しまずに協力していきます。それは、かつて我々が研修した施設から学んだ姿勢であり、そのことが、まさに「恩返し」ではないかと思っています。




粒子線がん治療装置 その安定的・効率的運転

装置管理科長 板野 明史


 兵庫県粒子線がん治療装置は、1999年の試験運転開始以来、治験、一般診療のための運転を続け、2007年1月末で累計約29,000時間の運転を行ってきた。その運転時間の推移を、月毎の消費電力の3ヶ月移動平均で代替え表現したものを、2003年4月一般診療開始以来の月間新規患者数と共に下図に示す。試験運転、治験時の運転に較べて一般治療時は、当然の事ながら安定しているが、年1回行われた約3 週間の定期点検時期に対応して運転時間も患者数も減少するのが見て取れる。しかしながら2006年春の定検以降は、定検を月1回ごとに分散実施することにより、より安定して推移している。定検時外の週末は一般週例点検を行い、ビーム再調整運転等は定検終了時のビーム確認運転と共に纏めて行うことにより、運転時間が減少する効果も見て取れる。過去の運転の安定性、再現性の実績から、治療照射の時点のみビーム輸送系電磁石を通電し待機中はオフすることにより、より一層の省エネルギーも実現した。その結果2006年度はそれ以前に較べて患者数が増えたにもかかわらず、運転時間、消費電力ともに減少傾向にある。また治療計画の精度実績により、多数を占める前立腺患者の照射パラメーターは新患測定を省略して理論計算値を用いることが可能となった。結果昨年10月以来更に運転時間が減少傾向を表している。以前は1年当たりの運転時間は、4100時間を超えていたが、昨年以来徐々に減少を続け、現在は4000時間をきるようになっている。今後ともこのペースを維持し、安定的、効率的な装置運転に努めたい。




患者・医療者のコミュニケーション

看護科 がん看護専門看護師 藤本 美生


 近年、“治る治療”または、根治的でなくても“病気とつきあっていける治療”が発達してきたことにより、患者さん自身がどのように病気とつきあっていくかを考え、自分にあった治療法を選ばれるようになってきました。
 そのような中、粒子線治療を受けられた患者さんの中から“医療者ともっと対話をしたい”“他の患者さんがどのように病気を受け止め治療を頑張っているのか話を聞きたい”“自分たちにとって先輩患者さんが先生である”“自分の体験を他の患者さんに役立てたい”という意見を多く耳にするようになってまいりました。そこで家族を含めた15 名前後の患者さんと院長、看護科長、がん看護専門看護師らが同席し、自由に話せる懇話会を月に数回開催することにしました。その中で、がんと診断された時のショック、頑張ることができるようになった家族の言葉、患者さん同士の励まし合い、治療後の過ごし方はどうしたらよいのかなど、さまざまな患者さんの心の中や生活に根ざした体験を話してくださいました。懇話会終了後の感想には、ほかの患者さんの病気とのつきあい方など話がきけてよかったという感想が多くあり、患者さんにとって「がんを体験した人」からの何よりの支援になったのではないかと考えています。また体験を人に話すこと、それはさらに自分を強くするものであると思います。このような会を通して、また患者さんの欲求の中には、体験を共有したい気持ちと同時に、同じ境遇の患者さんの役に立ちたいという欲求も同時に存在していることを感じました。次の患者さんの役に立つのであればと、複雑な患者カルテシステムでの経過観察に多くの患者さんが協力してくださっていることからも伺えます。
 そして医療者にとっても患者さんから語られる体験は、患者さんが頼もしくもあり、医療者の役割は何かを考えるよい機会となっています。
がん医療においてグループ教育が受け入れにくかった背景には、不治の病のイメージが強くお互いの境遇や闘病の方法を共有することが難しかったことがあげられます。「患者さん同士がパートナーシップをもつ」ということを歴史的に調べてみると、アメリカで乳ガン患者の乳房切除術後の精神的な問題解決のために作られた会がさまざまな患者さん同士の支援プログラムのモデルとなっています。さらにがんになったということがアメリカでは社会的な汚名であるという時代があり、1950年代にはがん治癒者クラブが、がん患者が社会的汚名を被ることに立ち向かう会として発展してきたようです。現在、がんは3人に1人がかかる身近な病気であり、がんと付き合いながら社会復帰されている方も多くおられ、患者さんのイメージも変化し患者さん同士のパートナーシップの形も変化してきています。患者同士の相互援助の考えは、自分自身をみつめたり、お互いに影響を与えあって困難を克服していく技術を分かち合うことに価値を置かれるようになってきたように思います。
 粒子線医療センターでの懇話会では、それぞれの患者さんの体験は価値あるものであり、同じ状況にいる人たちの感情や体験が同じであったり、違ったりすることを見聞きしながら、患者さん同士も医療者もパートナーシップをもち影響を与えあいながら交流をしていればと願います。




薬剤科の業務について

〜入院時の持参薬チェックについて〜


 患者さんの多くは、何らかのお薬を服用されており、それを持って入院してこられます。従来は全国的にみて、ほとんどの病院において薬剤師の積極的な関与はなされていませんでしたが、持参薬に関連した医療事故が発生したことより、患者安全確保の一環として薬剤師が関与する流れとなってきています。
 当院では、約3年前から薬剤師が全ての持参薬を確認していますが、今回は、この業務について紹介したいと思います。

【概 要】
  • 患者さんの入院時に、看護師は患者さんの持参薬を薬剤科に渡し、薬剤師がそれをチェックする。(薬局で購入した医薬品、サプリメントも含む)
  • 薬剤師は、持参薬報告書(薬品名、薬効、服用方法、残数、当院採用薬品の有無や相当品など)を作成し、医師・看護師に報告する。
  • 医師は、服用を継続するかどうかを決定し、看護師・薬剤師に報告する。
  • 薬剤師は、これらの情報をカルテに入力し医療スタッフで情報を共有する。
  • 必要時には、処方した医療機関や調剤した薬局に内容を確認する。

【メリット】

  • 当院で新たに薬が処方された場合、持参薬との飲み合わせや重複して薬が処方されていないかがチェックできる。
  • 持参薬がなくなり、当院採用薬品に切り替わった場合、投与量や服用方法が適切であるかどうかチェックできる。また、患者さんに対し、従来使用されていたお薬との違いを適切に説明することができる。
  • 使用に注意が必要な薬剤(例えば、抗悪性腫瘍薬や特殊な用法の医薬品など)について医療スタッフに必要な情報を提供することができる。

 当院では薬剤師が1名のため、薬剤師不在時は、看護師が「持参薬一覧表」を作成し、翌日に薬剤師が確認します。このようにスタッフ間の連携を密にし、薬物療法の観点からも安心・安全な医療に努めています。




免疫力を上げる

栄養士 分元 麻美

1.食事と私達を取巻く環境
 最近では「お取り寄せ」などが流行っているように、美味しいものを食べるのが好き、食べ歩くのが趣味という方も多く、食について、「美味しい」だけではなく、旬やその土地でしか食されていない珍しいもの、ダイエットや美容など需要はますます高まっています。入院中の患者さんにとっても、食事は1番の楽しみとよく聞きます。医療の現場でも、医師による治療や薬と並んで、食事療法がとても大切な位置づけとされています。近年では、栄養情報もテレビや雑誌などでわかりやすく紹介されており、メタボリックシンドロームなどを始めとして、一般の方々の健康や栄養についての感心は、ますます高まっています。一方で間違った情報や、サプリメントなどの偏った大量摂取などによって栄養障害を起こされる方もおられます。

2.ガンにならない、再発させないための食事、環境づくり
 当センターに入院中の患者さんも食事や栄養についての興味を持っておられる方が多く、そういった方々への情報提供の場として、みんなが集まる食堂に掲示板を新しく設置しました。まずは病院栄養士からの情報提供。そして看護科からの連絡事項や映画鑑賞会のお知らせ、さらに給食業者からの食事についての紹介などなど。食堂を食事の場所だけにせず、全国各地から来られている患者さん同士の会話が生まれる場所として活かしていければと思っています。楽しい雰囲気は、免疫力を高めるとともに、病気からの回復を助け、再発防止にも繋がります。患者さんからの各部署への質問も受け付けており、回答についても張り出しております。食堂では、掲示板だけでなく、やむを得ず遅れて食事をされる方や牛乳を温めたいなどの希望が以前からありましたので、電子レンジの設置(2台)もあわせて行いました。これによって、食事の温めはもちろん、朝食の牛乳を温めてカフェオレを作る方もおられたりと、ささやかではありますが質の向上ができたものと思っています。食事内容については、炊き込みご飯などの味付けご飯や麺類の希望が多く、現在は週1回を目標に味付けご飯と麺類を実施しております。味付けについても、病院栄養士と給食業者栄養士が協議し実施という形をとっており、食事提供後についても評価し、今後に生かせるような体制をとっております。

3.今後の取り組み
 医師や看護科、薬剤科と連携してNST(栄養サポートチーム)活動をしていき、頭頚部の治療をされている患者さんを始めとする食事を摂りにくい方への低栄養状態の回避、改善をしていきたいと思っています。その他にも、全国から集まる方へ、兵庫県の郷土料理を提供するなどのさらなるメニューの充実や、朝食の米飯食、パン食の選択化、週1回程度の手作りおやつや喫茶なども考えております。また、食事以外でも、生活習慣の見直しとして「歩こう会」などで運動習慣を身につけられるような活動など、入院を意味のあるものに感じていただけるよう、改善を続けていきたいと思います。



粒子線医療トピックス

馬屋原 博医師が医学博士号を授与されました。

 当センターに平成18年3月末まで在籍され、現在、さらに国立がんセンター中央病院(東京都中央区築地5−1−1)放射線科にて、診療を続けておられる馬屋原博先生が、このたび医学博士号(神戸大学)を授与され、論文が米国の医学雑誌に掲載されることとなりました。
 先生は、当センター在職中から患者さんの治療に全力を傾けられ、その研究の成果が今回の取得につながったものとスタッフ一同喜んでいます。
雑誌名:International Journal of Radiation Oncology,Biology,Physics(米国放射線腫瘍学会誌)
題 名:Acute morbidity of proton therapy for prostate cancer:the Hyogo Ion Beam Medical Center experience
(前立腺癌に対する陽子線治療の急性期有害事象:兵庫県立粒子線医療センターでの経験)
著者・共著者:馬屋原博、村上昌雄、香川一史、川口篤哉、小田康江、宮脇大輔、佐々木良平、杉村和朗、菱川良夫
内 容:陽子線治療の急性期直腸有害事象は従来のX 線外照射で報告されている頻度よりはるかに少なく、陽子線治療の特徴と考えられる。


日本放射線腫瘍学会(JASTRO)の準認定施設になりました。
 粒子線治療を行う施設は、現在国内に6か所しかなく、粒子線治療を行える医師を養成していくことは、今後、粒子線治療を普及させていくためにも不可欠ですが、このたび、当センターでの勤務年数が、放射線科専門医としての学会認定資格を取得するための経験年数として通算できる準認定施設に認定されましたので、お知らせします。
 今後も、粒子線治療を行ってみたいと思う医師が全国から研修に来てくれるような先進治療の施設として実績を積んでいくとともに、一人でも多くの方を治療できる病院をめざして研鑽に励んでまいります。