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兵庫県立粒子線医療センター
ニュースレターNo.6
July 1997
CONTENTS
ニュースレター目次
「粒子線治療センターの開設に向けて」
阿部光幸(兵庫県立成人病センター総長)‥‥‥‥‥‥‥1
I 県立粒子線治療センター(仮称)の事業進捗状‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
II 日本の新しい粒子線治療施設の紹介
○陽子線治療開始に向けて(国立がんセンター東病院近況)‥‥‥‥‥‥‥2
須賀大作(兵庫県健康福祉部健康増進課)
◎ 研修印象記‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥7
(資料) 放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療臨床試行状況‥‥‥‥8
◎ 学会参加報告‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥9
「粒子線治療センターの開設に向けて」
- ご承知のように、わが国のがんによる死亡者数は年々増加の一途を辿り、全死因に占める割合は今や30%にも達することから、がんは大きな社会的関心事となっております。かつて、がんは不治の病といわれました。そのような時代には、たとえ重要な機能を失うような侵襲の大きい治療でも、命が助かれば幸運として受け入れられました。しかし、医学の進歩によりがん全体の治癒率が50%近くに改善された今日では、がん治療は単に治癒率だけでなく、治癒の質が問われる時代になったといえましょう。治りさえすれば良い時代ではなくなったということです。
このがん患者の治癒の質を高めるという要望に、最も良く応えなければならないのは放射線治療です。なぜなら、放射線治療は切らずにがんを治すことに最大の特徴があり、また、そこにこそ放射線治療の存在する意義があるからです。ところで、これまでの放射線治療の最大の弱点は、正常臓器を避けて、がんの部分だけを照射することができないことです。このため、症例によっては十分な線量を安全に照射できない場合がありました。この問題は、大型の加速器から得られる粒子線という新しい放射線を利用することで、飛躍的に改善できることが明らかになりました。なぜなら、粒子線はその物理的特性から、病巣に限局的に照射することができるからです。
この度、兵庫県では貝原知事の英断で、播磨科学公園都市にこの粒子線治療施設が着工され、平成13年4月の治療開始に向けて現在工事が進められています。これが完成すれば、西日本で最初の粒子線治療がスタートすることになります。また、同公園都市には平成9年から世界最大の大型放射光SPring-8が稼働しており、現在その医学利用が検討されています。この放射光を使えば、従来のX線より更に早期のがんが診断でき、また、がんの微細構造がより鮮明に描出される可能性があります。したがって、将来この両施設の機能を総合的に組み合わせれば、これまでより遙かに高精度で副作用の少ない放射線治療を行う ことができますので、がんの治癒率と治癒の質の改善に大きく貢献できるものと期待されます。
この度、私は兵庫県の招きにより、この新しいがん治療に携わることになりました。もとより微力ではあり ますが、一人でも多くのがんの患者さんが社会復帰を果たし、また、質の高い生活を送ることができますよう準備を進めておりますので、皆様のご支援とご鞭撻をお願いいたします。
-
兵庫県立成人病センター総長
阿部 光幸
1
I 県立粒子線治療センター(仮称)の事業進捗状況
- 粒子線治療センター(仮称)は、照射治療装置とこれを格納する照射治療棟及び50床の病床を有する病院棟で構成されます。
平成9年3月の照射治療装置の製作発注に続き、同年10月には照射治療棟の建設に着工しました。
平成10年度は、引き続き、治療装置の製作及び照射治療棟の建設を進めるとともに、病院棟の実施設計に着手することとしており、平成12年度の完成に向け、事業は順調に進んでいます。
- 1 照射治療装置製作
昨年度に引き続き、入射器系、主加速器系、HBT系、照射器系等の工場製作を進めているほか、回転ガントリーをはじめ、これまでの製作品の組合せ試験を行っている。
今後、平成10年度末までに、製作・機能チェックを終え、照射治療棟が竣工する11年度夏から搬入・据付を行う予定。
組合せ試験中の回転ガントリー
- 2 照射治療棟建設
着工からはや10ヶ月目に入り、これまで、岩盤の掘削工事、厚さ2m以上の基礎の鉄筋コンクリート工事を行い、ほぼ全工区にわたり1階の床部分のコンクリート打ちまで完了している。
 |
建設が進む照射治療棟 |
現在は、照射治療室の並ぶ1階部分の壁の鉄筋コンクリート工事が最盛期を迎えている。
放射線の遮蔽ということもあり壁の最大厚さは5mもあり、大型のクレーン4台、200名近い作業員による大がかりな工事となっている。
今後、4階までの鉄筋コンクリート工事を進め、来年1月には建物の形が出来上がる予定。来夏完成を目指す。
2
II 日本の新しい粒子線治療施設の紹介
- 今回は、陽子線治療開始に向けて準備が進められている国立がんセンター東病院を紹介します。
本年4月から兵庫県健康福祉部健康増進課に粒子線治療施設担当として着任した須賀放射線技師がレポートします。
- 陽子線治療開始に向けて(国立がんセンター東病院近況)
兵庫県健康福祉部健康増進課 須賀 大作
1 経緯
陽子線治療は、一定の深度で一気にエネルギーを放出して停止するブラッグピークという物理特性を有し、腫瘍に対して選択的に高線量を与えることができ、かつ副作用の原因となる正常組織への被曝を最小限に抑えることができる。
国立がんセンターでは「夢の放射線治療」とも称されるこの治療法の導入を長年にわたって要求をしてきた。平成7年度補正予算で「陽子線治療装置」導入が認められ、わずか1年の建設期間で竣工できたのは、陽子線治療に対する土壌ができていたことが推察される。
導入の背景には、数百億円と高額で、広大な面積を要し、研究施設以外では導入が困難であった治療施設が、物理工学の進歩により、数十億円にまで引き下げられたことや、装置の小型化が図られたことがある。
設置場所については、国立がんセンター中央病院では、十分なスペースが確保できないことから、がんセンター東病院とされたが、治療に当たっては、中央・東両病院の連携のもとに効率的な運用が図られる。
平成9年3月に竣工し、治療装置の精度試験、ビーム調整、真空気密試験、物理測定など多くの段階を経て、まもなく治療開始となる時期を迎えるに至った。
- 2 施設の概要
国立がんセンター東病院の陽子線治療棟は、地上3階建て(一部地下および4階建て:延べ床面積4,756u)となっている。
- 1階:加速器本体、ビーム輸送部、3照射室(水平照射室1、回転照射室2)
2階:回転照射室部分吹き抜け、加速器制御室、ボーラス・コリメータ工作室、PET(将来導入予定)
3階:診察室、患者教育室、固定具作成室、治療計画室、CTシミュレータ室、MR室、会議室、スタッフ居室、患者動線、医療スタッフ動線が機能的に確保された設計となっている。
陽子線治療待合いからは、緩和ケア病棟に隣接された緑地を見渡せることができ、良く手入れされた季節の花が、目を和ませてくれる。
- 3 装置および治療室の概要
治療装置:陽子線加速器(高エネルギー型サイクロトン:235MeV)110MeVから235MeVまでの4段階のエネルギーが出力可能
独自設計:回転照射用ガントリーとこれに対応する治療寝台を独自に設計した。 固定水平照射用の治療椅子も独自に設計され、高精度を保持し、患者緊急コール用のボタンなど細かな配慮がなされている。
各治療室の概要
照射室
|
対象疾患
|
最大照射野
|
散乱方式
|
位置付方式
|
呼吸同期
|
固定水平照射室 |
目、脳腫瘍
頭頚部腫瘍 |
10cm
|
二重散乱体
|
椅子
|
なし
|
回転照射室1 |
腹部、胸部
骨盤 |
20cm
|
ワブラー
|
カウチ(寝台) |
あり
|
回転照射室2 |
頭頚部、胸部
腹部脳腫瘍 |
30cm
|
二重散乱体
|
カウチ(寝台) |
あり
|
3
- 4 治療対象
陽子線治療のRBE(放射線生物学的効果)は、従来の放射線治療と同等であることから、今まで蓄積されてきた治療成績をそのまま応用できる。
すでに眼の悪性黒色腫、脳腫瘍の治療効果は世界的に確認されている。がんセンター東病院では、これらの他に以下の疾患についても治療効果を期待している。
(1) 頭頸部がん
頭頸部領域の扁平上皮がんは放射線感受性が高く、機能温存が重要となるため、放射線治療の適応とされている。粘膜炎、唾液腺分泌障害、味覚障害などの副作用が、陽子線では軽減できること、照射総線量を増加できることから、治療効果の向上が期待できる。
(2) 肺がん
ヘリカルCTにより10mm以下の早期肺がんが検出されるようになってきた。転移の可能性が少ない早期肺がんでは、局所制御で治癒が期待される。高齢者や、低肺機能者には外科手術より、陽子線治療が肺機能を損なわずに治療できることから、陽子線治療が第一選択とされる可能性もある。
(3) 肝臓がん、胆のう胆管がん、膵がん
腹部領域では、放射線治療による放射線腸炎、肝障害などの副作用があり、十分な線量を投与することが困難であった。陽子線治療では照射領域を三次元的に限定でき、かつ高線量照射が可能となる。治療が困難とされる、肝臓がんの門脈内腫瘍塞栓に対しても治療効果が期待される。
(4) 前立腺がん
従来の放射線も効果があるが、陽子線治療では副作用の原因となる膀胱や直腸の被曝線量を減らすことができ、晩期の放射線障害の発生を防止できる。
4
- 5 治療開始に向けて
治療装置の精度試験、安定性を確認し、平行してRBEを求めるための生物照射や治療計画装置を稼働させるための物理測定が精力的に続けられた。
生物照射では、照射効果を判定する細胞のカウントが3.5日後と決まっているため、陽子線照射は夜中にスケジュールされる。
物理測定はMGHの測定プロトコールを参考として、荻野医長が測定内容を定めてスケジュールされる。一連の作業は緻密な連携のもと予定通りにこなされていく。測定の合間におこなわれるミーティングで問題点を整理し検討が加えられる。
(1) 治療シミュレーション
治療開始に向け、人体等価ファントムとボランティアを使った実践的な治療シミュレーションがおこなわれた。
【1】人体等価ファントム
ファントム一郎と命名され、定量的な評価をおこなった。患者コリメータやボーラスの精度を判定することが目的とされた。
- 【2】ボランティア
荻野医長自らがボランティアとなり治療終了までの一連をシミュレーションをおこない、運用上の問題点、患者さんの状態を解析することが目的とされた。
正確な照射位置づけが行えるCT/シミュレータシステム
- (2) 多地点TVカンファレンス
平成7年5月25日に稼働を始めた多地点TVカンファレンスは、国立がんセンター中央病院、東病院、国立札幌病院、国立四国がんセンター、愛知がんセンターなど全国主要ながん治療施設を結ぶ「がん情報ネットワーク」である。
6月4日、多地点TVカンファレンスで陽子線治療を開始するにあたり、陽子線治療について荻野医長が、これまでの経緯について村山医長が報告された。
音声もクリアで、数百キロ離れた施設がリアルタイムに情報を共有でき、検討できるシステムである。カンファレンスは陽子線治療への期待と関心の高さを示し、活発な討議がおこなわれた。
- 日本国内で初めて臨床応用される国立がんセンター東病院の陽子線治療施設は、まもなく待望の治療開始の日を迎える。
5
- 研修印象記
平成10年4月、粒子線施設担当に放射線技師として配置され、現在、国立がんセンター東病院において陽子線治療の研修を行っている。国立がんセンターの使命に、診療、研究、研修が謳われている。国内外からがん治療に関わる医師をはじめ医療スタッフが研修に集っている。機能的に整備された研修棟はもとより、研修を受け入れる体制が、がんセンター職員の中に根付いていることが体感できる。
陽子線治療の基礎すら判らないまま研修にきた技師に対して、適切な資料を与えていただき、生活に必要な情報も地図を含めて提供していただいた。
何よりも感銘を受けたのは学べるものは、どうぞ何でも学んで下さいという姿勢である。何の違和感もなくミーティングに参加することができ、国立がんセンターの歴史と誇りを感じることができる。
研修は、陽子線治療をまもなく開始する時期にあたり、ビームの物理測定や放射線治療計画装置へインストールするビームデータの収集が連日続いた。またRBE(放射線生物効果)を算出するための生物照射も立ち会うことができ、池田先生(放射線部長)からも「ちょうど良い時期に研修に来た」と声をかけていただいた。
がんセンター東病院の「陽 子線治療」は、放射線治療医2名、医学物理1名、放射線技師2名の、まさしく少数精鋭でスタートする。陽子線治療開設に向けて、設計・設備・開発・技術の全てにわたって、定められた期間で成し遂げられた能力は、世界が驚嘆するところである。
最後に、陽子線治療に携わる2名の放射線技師をサポートする、阿南放射線技師長の「新しいことに挑戦できる2名の技師は幸せだよ」という言葉を噛みしめて、残りの研修期間を努めていきたい。

(兵庫県健康福祉部健康増進課 須賀大作)
6
- (資料)放射線医学総合研究所の重粒子線がん治療臨床試行状況
放射線医学総合研究所では、平成6年6月から「重粒子線がん治療臨床試行」を開始し、平成10年2月までの3年半の間に389例の患者さんが登録されました。これまでに登録された389例(393腫瘍)のプロトコール別・照射期別患者数は次表のとおりです。
-
重粒子線治療患者数(平成6年6月〜平成10年2月)
*放医研ホームページより
プロトコール(注1)部位
|
第1期
|
第2期
|
第3期
|
第4期
|
第5期
|
第6期
|
第7期
|
小計
|
第8期
|
合計
|
頭頚部
|
3
|
4
|
5
|
5
|
-
|
-
|
-
|
(17)
|
-
|
17
|
中枢神経
|
-
|
6
|
4
|
4
|
1
|
9
|
4
|
(28)
|
2
|
30
|
肺
|
-
|
6
|
7
|
4
|
11+1
|
16
|
4
|
(48)
|
2
|
50+1
|
舌
|
-
|
2
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
(2)
|
-
|
2
|
肝
|
-
|
-
|
5
|
7
|
6
|
7+1
|
-
|
(25)
|
-
|
25+1
|
前立腺
|
-
|
-
|
2
|
7
|
8
|
10
|
5
|
(32)
|
3
|
35
|
子宮
|
-
|
-
|
3
|
6
|
3
|
10
|
5
|
(27)
|
4
|
31
|
総合(注2)
|
-
|
-
|
8
|
16
|
7
|
9+1
|
15
|
(55)
|
15
|
70+1
|
骨・軟部
|
-
|
-
|
-
|
-
|
2
|
7
|
6
|
(15)
|
7+1
|
22+1
|
消化管(食道術前)
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
1
|
2
|
(3)
|
3
|
6
|
消化管(食道根治)手術非適用
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
3
|
(3)
|
8
|
11
|
頭頚部II(注3)
|
-
|
-
|
-
|
-
|
8
|
11
|
-
|
(19)
|
-
|
19
|
頭蓋底
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
3
|
(3)
|
3
|
6
|
頭頚部III(注4)
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
17
|
(17)
|
14
|
31
|
肝II(注5)
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
7
|
(7)
|
12
|
19
|
肺II(注6)
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
11
|
11
|
子宮II(注7)
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
2
|
2
|
前立腺II(注8)
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
-
|
2
|
2
|
合計
|
3
|
18
|
34
|
49
|
46+1
|
80+2
|
71
|
(301)
|
88+1
|
389+4
|
<注:+は同一患者の2病巣治療。従って、総治療病巣数は「393」>
第1期
|
H6年6〜H6年8月
|
第5期
|
H8年4月〜H8年8月
|
第2期
|
H6年9月〜H7年2月
|
第6期
|
H8年9月〜H9年2月
|
第3期:
|
H7年4月〜H7年8月
|
第7期
|
H9年4月〜H9年8月
|
第4期
|
H7年9月〜H8年2月
|
第8期
|
H9年9月〜H10年2月
|
(注1)プロトコールとは、臨床試行を実施するに当たり定められた治療計画書
(注2)総合プロトコール:すでに臨床試行プロトコールが作成された対象以外に、重粒子線の 適応領域を見いだして、当該領域のプロトコールを作成するための基礎データを得ることを目的としたプロトコール(すでにこの総合プロトコールのもとで、「頭蓋底・傍頸髄腫瘍」、「骨・軟部腫瘍」「食道がん」のプロトコールがつくられた)
(注3)頭頸部II(頭頸部プロトコールの分割照射法を6週間・18回照射から4週間・16回 照射に変更したもの)
(注4)頭頸部III(重イオンの抗腫瘍効果をみることを目的とした第II相臨床試行)
(注5)肝II(分割照射法を照射開始から3週間・12回以下の短期小分割照射にしたもの)
(注6)肺II(照射分割法を9回/3週間の短期小分割照射にしたもの)
(注7)子宮II(子宮原発巣にのみ線量増加を行うもの)
-
7
-
学会参加報告
- 〇 第8回アジア・オセアニア放射線学会 (AOCR'98)
- 第8回アジア・オセアニア放射線学会 (AOCR'98)は、片山仁会長のもと、平成10年4月5日から8日まで、神戸国際会議場とポートピアホテルで開催された。
現在のアジアの経済状況ではアジア諸国からの参加者はほとんどないのではと予想されたが、意外に参加者が多く、国際性のある学会となった。プログラムは、教育に主眼がおかれており、セッションに参加すれば、得るところのある内容となった。
3日目の夜には、Banquetが、貝原兵庫県知事、笹山神戸市長を来賓として盛大に行われた。トランペット の演奏など華やかな雰囲気に、遠来の参加者も楽しまれたようだ。
最終日の午後は、播磨科学公園都市に完成した大型放射光施設SPring-8の見学ツアーで、グループごとに見学したが、時間がやや短かく残念だったという参加者の声も聞かれた。その後先端科学技術支援 センター大ホールで放射光の医学利用の講演3題と県立粒子線治療センター(仮称)の講演発表があった がいずれも通常の放射線医学の域を越えた、最先端の発表で、質問もあり有意義な会であった。
〇 第57回日本医学放射線学会総会
第57回日本医学放射線学会総会は、河野通雄会長のもと、平成10年4月9日〜11 日、神戸国際会議場、神戸商工会議所会館を中心として、開催された今年は、キューリ夫 妻が、ラジウムを発見して100年目であり、本学会での発表を聞けば、診断・核医学・治 療の各分野における、この100年の進歩はめざましいものであることが再認識された。特 に癌治療の領域では、シンポジウム「QOLを高める癌の集学的治療」の中で、各専門家の QOLを高めるための様々な方法が紹介された。粒子線治療の目的も従来の治療では得 られないQOLを得ようということであり、このシンポジウムは大いに参考になった。
また、ポスターによる粒子線治療施設の紹介を行ったが、興味を持って質問される人も多く、今後もこのような発表を続ける必要があると感じられた。
3日間ではあったが、全国の放射線医が神戸に集まり、震災からの復興の状況に触れ ていただいた。 「3年前と比べて、本当に良く復興されたね。」と多くの人から言葉をかけて いただき、神戸に住むものにとって大変有り難いことであった。
-
(兵庫県健康福祉部健康増進課 菱川良夫)
8
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