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兵庫県立粒子線医療センター

ニュースレターNo.3
July 1997


CONTENTS

ニュースレター目次

「兵庫県立県立粒子線治療センター(仮称)に期待する」 ‥‥‥‥‥‥1
放射線医学総合研究所顧問  平尾 泰男

I  粒子線治療の適応について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥2
1. 筑波大学陽子線医学利用センター‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2
(1) 陽子線治療の一般的除外基準‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 2
(2) 照射適応 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
2.放射線医学総合研究所 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 3
(1) 全ての適用条件 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥3
(2) 各部位の適応病変 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥4

II 播磨科学公園都市について‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥5
1. 播磨科学公園都市の建設計画 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5
2. 播磨科学公園都市の主要施設 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 5
3. 都市関連施設 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 6

 ☆播磨科学公園都市まちびらきフェスティバル’97‥‥‥‥‥‥‥ 6
播磨科学公園都市第1工区 ‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥ 7
兵庫粒子線治療国際シンポジウム’97開催のご案内 ‥‥‥‥‥‥8



「兵庫県粒子線治療センター(仮称)に期待する」

 播磨科学公園都市が着々と整備されていくのは、誠に喜ばしい。様々の応用研究の期待が大きい最新の放射光 SPring−8 の稼働を目前にして、さらに標記の施設が着工の運びとなった。この施設は、陽子線、重粒子の両方のビームががん治療の専用装置として活用できる世界初の施設として注目を浴びている。筑波大学陽子線医学利用センターにおける長年の研究実績、放射線医学総合研究所重粒子治療センターにおける最近の研究実績を基礎とし、県立成人病センター等総合医療機関群を診療基盤としたこの施設は、放射線治療における最新の施設となる可能性が大きい。

著名な加速器物理学者ロバート・ウィルソン博士が陽子・重粒子のブラッグ・ピークのがん治療への応用を提唱してすでに50年が経過している。その間の加速器物理学の進歩、わが国の工業技術の進歩、粒子線生物学・医学研究の進歩、そして最新の診断技術の目覚ましい発展が、今日医療専用施設として画期的成果を約束される状況をもたらした。将に機は熟している。我が国はこの分野で世界をリードする最前線に立とうとしている。この意味で貝原兵庫県知事の英断に深く敬意を表したい。
 一方、この粒子線治療は様々の未開発な可能性を包含している。例えば、情報処理を含む高度診断の一層の進歩に待つところも多い。この施設が研究開発の機能も併せ持つことが、治療面での充分な成果につながる必須の要件であろう。粒子線は、ミクロ、遠隔、無痛、無菌のメスである。その物理的特性は良く理解され、生物学的特性の研究も進んでいる。臨床的効果と副作用の実績もようやく現れ始めた今日、その特性を診療に如何に有効に活用するかが重要な研究開発課題である。この粒子線治療センターの完成が待望される所以である。

放射線医学総合研究所顧問

平尾 泰男

1


I 粒子線治療の適応について

〔放射線医学総合研究所・筑波大学陽子線医学利用研究センターの適応基準〕
 県立粒子線治療センター(仮称)では、県立成人病センターをはじめ、近畿・中国・四国の大学病院等から患者を受け入れることとしており、特に県内では、県立成人病センタ−に常時粒子線治療相談窓口を設置するほか、県内で放射線治療を実施している22病院においても粒子線適応の判定が行えるようネットワークを整備することとしています。
ニュースレターでは、今後粒子線治療がどのような疾患に適しているかお知らせしていきます。
県立粒子線治療センター(仮称)が完成し、治療が開始されるのは平成13年度の予定ですので、粒子線治療の適応となり治療を希望される場合は、現在粒子線治療を行っている筑波大学や放射線医学総合研究所へ紹介しています。
ただ、両施設とも研究の位置付けで治療していますので、非常に厳格な基準があります。

 以下にその基準を示しますが、治療基準に合致し、粒子線治療を希望される場合は、兵庫県立粒子線医療センター院長 菱川までご連絡ください。

1. 筑波大学陽子線医学利用研究センター

〔筑波大学陽子線医学利用研究センター「陽子線センターニュースNo.1(1995.9.5)」より〕
(1) 陽子線治療の一般的除外基準
 限られた治療時間を有効に使い、多くの方が陽子線治療の有効性に納得できる成績を短期間に挙げるために、以下の基準を設けて治療の適応を検討しています。

以下に示す一般的な除外基準に当てはまる症例はお断りする場合があります。
【1】 悪性腫瘍を疑う例で病理診断が無い。
【2】 対象部位への既往の照射(X線、電子線も含む)が有る。
【3】 対象となる部位以外に制御困難な腫瘍がある。
【4】 Performance Status 3以上。
【5】 予後が1年以内と予想される。
【6】 本人または適正な代理人により文書による同意が得られない。悪性腫瘍の場合においては病名告知を行うので、このことが無理であれば治療しない。

2


(2) 照射適応
【1】 肝臓癌
A 根治を目的とする症例
陽子線治療で特定の病巣を治癒せしめた場合に、長期の生存が期待できる症例で、以下の条件を満たすもの。
a 単発で腫瘍径が10cmを越えないもの。手術後の再発は断端再発でなければ可。
b 画像診断上、明らかな門脈浸潤がないもの。
(a、bについては治療直前にCT-Angiographyにより適応を判定する。)
c 未治療例、または塞栓術による治療効果が不十分と判定される症例。
d Modified-Child分類でAまたはBの肝機能にあり、腹水貯留や意識障害が無い症例。
e 腫瘍の境界と消化管(胃、十二指腸、大腸など)が少なくとも2cm離れているもの。
以上a〜dはこれまでの成績から根治性が期待できる因子で、eは消化管に陽子線照射による障害(出血、潰瘍など)を生じないようにするための項目である。

B 根治性は低いが試験的に適応とする症例
びまん型や多発例及び著しく肝機能の悪い症例を除く多くの症例は治療の対象になると考えられるが、特に以下の症例を積極的に適応としていく。
a 肝門部にあり、他の治療法が困難な例。
b 門脈内腫瘍塞栓。ただし、腹水貯留のないもの。
c 塞栓術後の局所再発例。
d 肝機能がChild C の症例。

【2】 肺癌
以下の基準を全て満たす例を対象とする。
a 非小細胞肺癌。
b 遠隔転移が無い。
c 術後再発では無い。
d UICC(1987)分類のT4*を除く腫瘍。
*縦隔、心臓、大血管、気管、食道、脊椎、気管分岐部を浸潤する腫瘍、または胸水を伴う腫瘍。
e リンパ節転移はN1*以下。
*同側の気管支周囲または肺門リンパ節への転移。
以上に適合する症例を根治的症例として治療する。なお、化学療法の既往は問わないが、照射中の化学療法は望ましくない。年齢と肺機能には制限を設けず、個々の例で判断する。

【3】 食道癌
以下の基準に適合するものを対象とする。
a 扁平上皮癌
*T3は食道外への進展で、以下の項目があればそう判定する。反回神経麻痺、横隔膜神経麻痺、交感神経麻痺、瘻形成、気管、気管支浸潤、下大静脈閉塞、奇静脈閉塞、癌性胸水。

2 放射線医学総合研究所

〔科学技術庁放射線医学総合研究所重粒子治療センター「重イオン治療プロトコールにおける適応疾患について」(平成8年度版)より〕
(1) 全ての適用条件
【1】 病理診断がついている。
【2】 計測可能病変である。
【3】 Performance Status(PS)が0〜2
【4】 年齢80歳以下
【5】 対象部位に放射線治療の既往がない。
【6】 広範な転移がない。

3


(2) 各部位の適応病変
 【1】 頭頚部腫瘍1)
・他の治療では高い治癒が望めない局所進行癌あるいは術後再発癌
1)18才以上
【2】 中枢神経系腫瘍2)
・悪性神経膠腫(AA&GBM)3)
・星状細胞腫(ASG2)
・転移性脳腫瘍
・髄腔内播腫がないもの
2)18才以上、3)X線照射と化学療法を先行
 【3】 肺癌
・非小細胞性肺癌
・肺野型のT1/2N0M04)
・胸壁浸潤型のT3N0M05)
4)手術非適応、5)術前照射
【4】 肝細胞癌
・T2-4N0M06)
・過去2ケ月以内に先行治療のないもの
・照射野内に消化管が含まれない
・肝障害度がChildAまたはB
6)門脈本幹腫瘍塞栓のないもの
【5】 前立腺癌7)
・臨床病期B2またはC
・pN0またはpN1あるいは画像診断でN0
・ホルモン療法2〜4ケ月使用後 8)
7)80才以上も可、8)ホルモン療法併用
 【6】 子宮頚癌9)
・先行治療のないもの
・IIb期の大きな腫瘍(4cm以上)
・IVa期
・頚部腺癌も可
9)PS3も可
 【7】 食道癌10)11)12)
・扁平上皮癌
・先行治療のないもの
・Iu〜Ei原発
・陰影欠損8cm以下
・深達度A2〜3
・瘻孔形成を認めない
10)遠隔転移がない、11)80才以上も可、12)切除可能例では術前照射として施行
 【8】 頭蓋底・傍頚髄腫瘍13)
・脊索腫
・軟骨肉腫
・髄膜腫
・その他の頭蓋底腫瘍
・切除困難あるいは術後残存
13)15才以上
 【9】 骨・軟部腫瘍14)
・骨・軟部原発の悪性腫瘍
・腫瘍径が15cm以下
・頭部、上位頚椎(C1-C2)原発を除く
14)14才以上

4


II 播磨科学公園都市について

 県立粒子線治療センター(仮称)が設置されるまち《播磨科学公園都市》がいよいよまちびらきします。
播磨科学公園都市は、人・自然・科学をコンセプトに、西播磨テクノポリスの拠点都市として整備が進められている、2千ha(芦屋市とほぼ同じ)にもおよぶ大規模なプロジェクトです。
豊かな自然環境を最大限に生かしながら都市基盤の整備を終えた(第1工区960ha)丘陵地には、すでに主要施設の数々が完成、夜間人口も約1,000人となり、まちはにぎわいを見せはじめています。最先端の放射光施設"SPring-8"の供用開始も10月に迫っています。

1. 播磨科学公園都市の建設計画

 (1) 位置
兵庫県南西部西播磨地域のほぼ中央。新宮町、上郡町、三日月町にまたがる丘陵地に位置します。姫路市の西北西約25km、神戸市から75km圏にあります。
 (2) 計画規模
全体を3工区に分け第1工区から整備を進めています。
都市開発面積
2,010ha
住宅用地 280ha
産業用地 160ha
学術研究用地 270ha
公共公益、周辺緑地 1,080ha
レクリエーション用地 220ha
計画人口 25,000人
完成目標年次 平成17年度

2 播磨科学公園都市の主要施設大型放射光施設(SPring−8)

 1 大型放射光施設(SPring−8)
光速に近いスピードまで加速された電子を磁石によって曲げることにより放射光 を取出し原子レベルの世界の解明等を行う施設。世界最大・最高性能の放射光施設として本年10月供用開始予定。
県では、SPring-8内に県有ビームラインを設置し、産学官共同プロジェクト方式で、企業による放射光利用促進を図ることとしているほか、がんの診断技術開発が期待されます。
姫路工業大学理学部
2 姫路工業大学理学部
戦後初めて新設された国公立の理学部として、平成2年度に開設され、平成8年度からは博士課程を設置しています。また、大学附置の研究所である高度産業科学技術研究所では平成10年度の稼働を目指し、小型放射光源(ニュ−スバル、1.5GeV)を設置し、放射光を利用した産業への技術指導等を行います。
3 西播磨コンピュータ・カレッジ
高度情報化社会に対応した情報処理技術者の養成施設として近畿で初めて平成3年に設置されました。

5


4 先端科学技術支援センター
都市内で学術研究活動を行う研究者等への便宜供与や企業の研究開発活動を支援する機関として平成5年に開設、会議室、宿泊施設、レストラン等が整備されました。平成10年完成を目途に貸研究室、実験室等を備えた第2期施設(研究開発支援施設)の整備を進めています。
県立粒子線治療センター(仮称)
5 県立粒子線治療センター(仮称)
「ひょうご対がん戦略」の一環として、兵庫県保健部が整備を進めている施設。
平成12年度末完成予定。

3 都市関連施設

1 住宅
戸建住宅「播磨・光都21」62戸を分譲しているほか、産業用地の分譲促進のための施設(オプトハイツ40戸)や高層住宅「サンライフ光都」99戸、SPring-8等の研究者・技術者を対象とした中層住宅(オプトヒルズ88戸)の賃貸を行っています。
2 生活関連施設
商業施設やアミューズメント施設を備えた「光都プラザ」を本年夏に開設します。
3 教育施設
・ 小学校・中学校
平成7年「播磨高原東小学校」、平成9年「播磨高原東中学校」がそれぞれ開校済。
・ 高等学校
姫路工業大学との緊密な連携のもと、特色ある学科編成を基本とした高等学校として平成6年に「姫路工業大学附属高等学校」が開校済。
4 産業用地
SPring-8に最も近いベストポジションに「研究開発産業用地」17区画、緑地を十分に取り込んだ優れた環境に「一般産業用地」17区画の計34区画。現在5社の立地が決定しており、一部で既に研究活動が開始されています。

☆播磨科学公園都市まちびらきフェスティバル'97

 世界最大の大型放射光施設(SPring-8)をはじめ、光都プラザなど第1工区の主要 な施設が完成し、都市整備のひとつの区切りを迎えることから、本年8月から10月にかけて開催されます。

・ テーマ 「"光"が生み出す輝く未来」
SPring-8が放つ"光"に希望を託し、西播磨の自然と歴史と伝統の"光"が輝きを増し、光り輝く未来が来ることを願う。
・ サブテーマ 科学が拓く未来のまち。
人にやさしい、いきいきとしたまち。
世界に開かれたまち。
・ 会期 平成9年8月1日〜10月31日
・ 開催場所 播磨科学公園都市(主会場)、西播磨地域全域(協賛イベント会場)

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播磨科学公園都市第1工区

播磨科学公園都市第1工区
アクセスマップ

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兵庫粒子線治療国際シンポジウム'97開催のご案内

 兵庫県では10年余にわたって実施してきた、がんへの総合的な対策「新ひょうご対がん戦略」のリーディング・プロジェクトとして、全国の自治体では初となる 粒子線治療を行う施設県立粒子線治療センター(仮称)の建設に着手し、平成12年度末の完成を目指しています。
本シンポジウムは、粒子線治療の現状と将来展望についての議論を通し、粒子線 治療についての理解を深め ることを目的としています。また、本年秋に供用開始が予定される大型放射光施設の見学会も予定しています。

1 開催日 平成9年8月23日(土)
2 開催場所 兵庫県先端科学技術支援センター 大ホール(赤穂郡上郡町)
3 プログラム
・大型放射光施設「Spring-8」見学(希望者のみ) 11時〜12時
・シンポジウム 13時〜16時30分
座長 阿部 光幸(国立京都病院)
【講演】
「粒子線治療の現状と将来展望」
(新しい粒子線治療施設、粒子線治療の適応・費用、大型放射光施設との連携他)
演者 John E.Munzenrider(マサチューセッツ総合病院)
秋根康之(筑波大学)
荻野 尚(国立がんセンター 東病院)
辻井博彦(放射線医学総合研究所)
菱川良夫(兵庫県)
【討論】
「陽子線治療・重粒子線治療の適応、医療費など」
4 参加費 無料
5 主催 兵庫県
6 後援 (社)兵庫県医師会、(社)日本医学放射線学会、日本放射線腫瘍学会、
日本放射線科専門医会
7 事務局 兵庫県保健部県立病院局経営課(粒子線治療施設担当)
〒650 神戸市中央区下山手通5−10−1

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兵庫県立粒子線医療センター